▼学長ブログ26で、リフレーミングとは「ものは考えよう」といった意味ですと書きました。また、リフレーミングするためには、『もう一人の私』という相談相手が心の中に必要であることも書きました。そして、私たちの「脳」は、そのような自己内対話を可能にする神経回路のメカニズムをもっています。「心」の問題に「脳」の視点を持ち込むのは唐突ですが、「負のスパイラルから抜け出す方法」を考える上では、「脳」の問題として捉えた方が、対処の仕方もあると思ったのです。
▼リフレーミングしても、リフレーミングしても、マイナスの感情に終始することが誰にでもあります。その時に「ものは考えようだよ!」と言われても、マイナス感情でしか考えられない自分を責めてしまうでしょう。『私』も『もう一人の私』もマイナスの感情を持って話し合うのですから、マイナス感情は増幅するばかりでどうしようもありません。脳科学者の茂木健一郎氏は、このことについて次のように述べています。
「いつまでも失敗したことばかりに目をやっていると、マイナスの感情の回路に切り替わってしまいます。脳の中で、マイナスのスイッチがパチンと入ってしまう。そうなると、なかなかその回路をプラスに切り替えることができなくなる。いつまでもグルグルとマイナスのスパイラルの中にいることになる。これを『引き込み現象』と呼んでいます。まさにプラスの発想をしようとがんばっても、マイナスの感情の渦の中に引き込まれてしまうわけです。」
「そして脳がマイナスの感情に支配されてしまえば、体にも悪影響を及ぼすことになります。体がだるくて朝起きられなくなる。仕事に出かけようとしても行けなくなる。・・・・・脳の引き込み現象とは、性格やタイプという問題ではありません。それは科学的に見ても、非常に危険な現象であるのです。」
▼私は、私自身がマイナスの感情を抱え込むというネガティブな思考に支配されている時、闇雲に悩むことを、あえて止めます。それは、脳の問題として捉えた茂木氏の次の指摘に納得しているからです。だから、いったん問題から逃げているように思えても自己嫌悪に陥る必要などもないのです。
「脳の神経回路というのは、使えば使うほど強化されるものです。たとえば数学者ならば、日々数学の問題を考え続けているので、数学に使う回路が強化されます。毎日文章を書いている小説家は、文章を書く回路が活発に働くようになる。そしてこのメカニズムは、同じようにネガティブな事柄まで学習してしまうのです。つまり、いつも自分のコンプレックスばかりを気にしてクヨクヨしていたら、それを脳が学習してしまう。変な言い方ですが、クヨクヨすることが得意になってしまうのです。「いつまでもクヨクヨするな」という励まし言葉がありますが、これはとても理に適ったアドバイスだと言えるでしょう。クヨクヨすることで、さらにクヨクヨが強化される。脳のシステムとはそういうものであることを、まず認識しておくことです。」
▼このような理由で、私は「クヨクヨ脳」を強化しそうな時には、負の感情を抑えながら、ポジティブな『もう一人の私』を立ち上げることができるまで、『私』の充電期間とします。そして、負の感情の占める割合が小さくなると、友人や同僚、家族の言葉や読んだ本の考え方に触れることで、ポジティブな『もう一人の私』が立ち上がり、「クヨクヨ状態」を乗り越えていくことができると思っています。私たちの「脳」には、そういう潜在能力があるのです。
(参考文献:茂木健一郎,『感動する脳』,PHP文庫,2009.4.17)


















