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平成22年 年始にあたり

               富山福祉短期大学 学長  北澤 晃

 

明けまして おめでとうございます。

鳩山政権において「コンクリートから人へ」という理念が掲げられています。『日本でいちばん大切にしたい会社』(法政大学大学院教授 坂本光司 著)を読み、そこで紹介されている中小企業には、すでにその形があるのではないかと感銘を受けています。

その中で、48年間増収増益という驚異の会社として「伊那食品工業株式会社」が取り上げられています。この会社が扱っているのはハイテクでもナノテクでもなく「寒天」です。寒天自体は斜陽産業ですが、伝統を大事にしながらも寒天という素材のなかに時代に合った価値を地道に追求してきました。さらに、地元の評価が高く、社員満足度の高い優良企業となっています。「寒天パパ」をつくっている会社です。私が以前、小学校教員として赴任した長野県上伊那郡にあります。

 

社是は、「いい会社にしよう」です。あまりに素朴で単なる飾りになりそうです。この社是には、次のような補足がされています。

「いい会社とは、単に経営上の数字だけではなく、会社を取り巻くすべての人々が『いい会社だね』と言ってくださる会社のこと」

「地を這うような伸びでいいから継続することが大事、坦々と地道に継続することで成長することが大事。年輪経営を心がける必要がある。」と前社長の塚越氏は言います。

それから、現在、伊那食品工業にはいたるところに「100年カレンダー」が貼ってあるそうです。2000年~2100年のカレンダーです。この百年カレンダーの中には自分の命日となる日もあることでしょう。こんなエピソードを知ると、長く続く時間を視野に入れて日々過ごして行くことを大事にしたいと思います。本学園も計画性のある経営を進めるために中期経営計画の策定に取り組んでいますが、それさえも100年の僅か数年先に過ぎないとすれば、本当に大事なことを下敷きにして構想しなければならないと思います。

 

さて、いくつかこの会社のエピソードを付け加えさせてください。

昔の話になりますが、「寒天」を漬ける時には、大きな石を上に置くのですが、ある日、担当の女性がクレーンの操作を誤って足に落とし、足先をつぶすという事故があったそうです。黒字転換して、「さあ、これから」という時だったのです。原因は従業員のミスとされても仕方のない事態でした。にもかかわらず、社長は「二度と危ない仕事はさせない」と考え、当時、会社が潰れるのではないかと思われるような金額を投入して、安全対策のための設備投資をしました。

この会社は伊那谷と呼ばれる自然の豊かな場所にあります。「工場公園」「ユニバーサルパーク」という言葉が今でこそありますが、この会社はその先駆けです。それは、「いい会社にしよう」とした結果です。木陰が多く、四季折々の花が咲き乱れ、保育園や幼稚園の子どもたちが、よくお弁当をひろげて食べています。そして、近所のお年寄りがベンチで日向ぼっこをしています。工場は交通量の多い道路を挟んで二カ所に分かれていたので、子どももお年寄りも安心して通れるように、伊那食品工業は歩道橋をかけるためのお金を寄付したことがあります。その結果、会社の敷地の中が、子どもたちの通学路にもなりました。これらは、本に紹介されている通りです。

 

こうしたエピソードが、「寒天」を売ることによって得られる「増益増収」とどのように関係しているのかは説明がつきませんが、この会社に係わる人々に「いい会社」として心から大切に思われているということの結果であることは間違いないと思います。

この会社のように一年一年を積み重ねた『年輪経営』に努め、地域から「いい短大だね、福祉の短大だからね」と言ってもらえるような歩みをしたいと思います。また、何より学生、教職員にとって、いい短大になっていくように私自身も頑張ります。具体的なビジョンを示す所信表明ではありませんが、私の今の思いです。どうか、今年もよろしくお願いします。

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