平成27年12月4日(金)、「社会福祉援助技術論Ⅵ」の授業で、本学卒業生の梶木真琴さん(活動名)に「ソーシャルワークと性の多様性」というテーマで、特別講義をしていただきました。
梶木さんはもともと女性としてうまれましたが、現在では男性として福祉の仕事をしています。
【LGBT】とは、【L:レズビアン(女性の同性愛者) G:ゲイ(男性の同性愛者) B:バイセクシュアル(両性愛者) T:トランスジェンダー(体の性とこころの性が一致しない状態)】のことで、セクシャルマイノリティの総称です。当事者が自分たちをポジティブに語る言葉として、北米やヨーロッパなどで使い始められ、最近では日本でも使われるようになりました。
現在、LGBTの方は日本人の7.6%に上るそうです。つまり、約13人に1人がセクシャルマイノリティの悩みを抱えているという計算になります。これは、左利きの人やAB型の人と同等の割合であるそうです。
最初に早稲田大学で制作されたDVD「先生にできることーLGBTの教え子たちと向き合うために~」を視聴しました。
その後、梶木さんは、ご自分の生い立ちに沿って、「赤いランドセルを買ってもらったことに違和感をおぼえた」「中学校の制服のスカートが嫌だった」など、性同一性障害(トランスジェンダー)で悩んでいたときのことをお話してくださいました。
そして、あるテレビニュースで性同一性障害の特集を観たことが、梶木さんの転機となりました。まだSNSもインターネットも普及しておらず、何かを調べたいときは本を読むしかなかった時分。ご自身の抱く違和感が何なのかもわからず不安に思っていた梶木さんでしたが、その特集を見て「まさに自分のことだ!」とはっとしたそうです。
それから、同じような悩みを抱えた人との出会いもあり、性転換手術への道のりを歩み、戸籍を男性に変更しました。違和感を抱いてから15年余りの長い期間の、心の葛藤と生活の困難を話されました。
梶木さんのお話を聞いた後で、学生たちはグループワークを行いました。
テーマ : 朝起きたら体の性が入れ替わっていました。今日から「女性(または男性)」として生きていかなければなりません。
・今どんな気持ち?
・周りの人に相談するか。相談する場合だれにするか。
・好きな人ができたらどうする?
積極的なグループワークのあと、それぞれのグループの代表者に出た意見を発表してもらいました。「こわいと感じると思う」「だれにも相談できない」「好きな人がいても告白はしないと思う」という意見や、「自分の性格上、あまり気にせず人に相談すると思う。でも時間がたつと、不安な気持ちにおそわれるのではないか」「信頼している母親には相談したい」などの声がきかれました。
まとめとして、梶木さんから学生たちへメッセージをいただきました。
「13人に1人、LGBTで悩んでいる人がいます。今までにきっと皆さんも出会っているはずです。いないのではなく、見えていないだけなのです。この講義を受けて知った言葉や知識でまわりの人を詮索することは決してしないでください。でももし、だれかが相談をもちかけてきたときは、どうかその人の心に寄り添ってあげてください。」
そして最後に、レインボーハート富山で制作しているバッジをいただきました。バッジはすべて虹色で描かれています。これは、≪体の性≫≪こころの性≫≪すきになる性≫≪表現する性≫など、性のあり方の多様性を表しているそうです。このバッジをつけることは、「偏見や差別のために自分を表現できないLGBTの方の力になります・支援します」という意思表示になります。
【学生の感想】
・LGBTについて理解するだけではなく、自分自身の考えを変えたり、住みよい環境が整えられるように協力する必要があると感じた。
・現実的な問題として向き合いたいと思う。
・セクシュアリマップを見て、男と女にという二種類に分けられるものではなく、いろいろな人がいることが分かった。
・今まで他人事として生活してきたため、もしかしたらそのような人を傷つけていたかもしれないと思うと、とても悔しい気持ちになった。
・今日は先輩からたくさんのことを学びました。福祉に携わるものとして知っておかなければいけないと思った。その人をその人として捉えられる人になりたい。
文部科学省は今年4月、同性愛や性同一性障害などを含む性的マイノリティ(LGBT)の子どもについて、配慮を求める通知を全国の国公私立の小中高校などに出しました。
福祉は人権を守るためのものです。そして人権が侵害されやすいのは少数派(マイノリティー)の人です。法務省が毎年行っている人権の強調項目の中に「性的指向や性同一性障害を理由とした偏見差別をなくそう」という項目が含まれています。
2年生はあと4カ月で福短を卒業し、多くの学生が福祉関係の施設に就職します。LGBTの人が施設に入所したり利用したりします。そのような時に今日学んだ知識、「多様性を尊重する気持ち」を思い出して頑張ってもらいたいと思います。